東京高等裁判所 昭和42年(行ケ)9号 判決
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〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)
二 原告は、本件審決が、本願発明をもつて、引用例記載のものから容易に発明をすることができるものであるとした点において、判断を誤つたものである旨主張するが、この主張は、理由がないものといわざるをえない。すなわち、本願発明と引用例記載の運動方向変換装置とを対比すると、両者は、機構上、被告主張の点において、それぞれ対応し、かつ、本件審決認定の点において一致し、ただ、本願発明においては、引用例記載のものと異なり、各傾斜路は環状に配置され、直角方向の移動に相当する運動(量)がすべて回転運動になるように構成されている点において、引用例のものと相違するにすぎないことは、本件当事者間に争いがなく、本願発明がこのような動力伝動機構としての構成をとることにより、引用例のもののように、被駆動部材に直線運動を行なわせる場合には、その移動距離が拡大され、また、本願発明のように、回転運動を行なわせる場合には、その回転角度が大きくなることは、それぞれの機構からみて、当然の結果であり、回転運動を行なわせることにより、それ以上に飛躍的に大きい回転角度を得ることはできないことは明らかであるから、このような運動量の変換機構の点においては、両者に格別の作用効果上の差異があるものとは認めがたく、他にこれを左右するに足りる証拠はない。他方、一般に直線運動を回転運動に変換すること自体は、開閉スイッチにみるように、従来からきわめて普通に行なわれていたことは、原告の認めて争わないところであり、この種装置において、その運動量の変換能率をできるだけよくしようとすることが、使用上あるいは設計上当然要求され、考慮されることであることは、いうまでもないことであるから、従来公知の電磁駆動スイッチの運動変換部分に、引用例記載のもののような機構をとり入れ、各傾斜路を環状に配置する構成とするようなことは、当業者の容易に推考実施しうる程度のこととするを相当とする。原告は、本願発明の構成をとることにより、初めてプラスチックのような好ましい材料の使用が可能になつた旨主張して、本願発明の引用例にない構成をとつたことによる効果を強調するが、固定部材、中間部材及び被動部材の各傾斜面の傾斜角度を大にすることができるのは、中間部材21を具えた機構を採用したことによるものであることは、本願発明の構成上明らかなところであり、引用例のものにおいても、同様の構成(中間部材を具えた機構)を具有することは前記認定したとおりであるから、これにより傾斜面の傾斜角度を大にすることができ、これに伴い、また、接触部における摩擦が減少し、その結果摩擦力の大きいプラスチック材料の使用が可能になることは、その構成及びプラスチックの周知の性質から、まことに見易いところであり、このような効果をもつて、本願発明における格別の効果とすることはできないから、原告の右主張のような事実のあることは、前示判断に消長を及ぼしうべきものでないことは、いうまでもない。
(むすび)
三 叙上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法のあることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由がないものというほかはない。よつて、これを棄却する。
(三宅正雄 武居二郎 友納治夫)
〔編注〕二 本願発明の要旨
第一の回転部分21の脱出運動路50に対して反対の傾斜の斜面の脱出運動路を有する第二の軸方向に移動不可能の回転部材22が第一の回転部分21に所属せしめられ、かくすることにより第一の回転部分21が駆動部分20と第二の回転部材22との間の中間部材になり、かつ、開閉器軸と連結された第二の回転部材24の回転が、第一の回転部分21の回転と同方向に行なわれることを特徴とする直線的に運動する磁石接極子が駆動部分20として、斜面50に沿つて運動し、かつ、この場合、その軸を中心として回転して軸方向にも運動する回転部分21上に作用する磁石接極子の微少直線運動を回転開閉器の開閉ステップに変ずるための電気回転開閉器用電磁駆動装置。(別紙図面第一参照)
三 本件審決理由の要点
本願発明の要旨は、前項掲記のとおりと認められるところ、これと本願出願前公知の特公昭三七―二、〇五六号公報(以下「引用例」という。)記載の運動変換装置とを対比すると、両者は、傾斜路を具えた固定部材と、該固定部材の傾斜路に当接しながら一方向に移動すると同時に傾斜路で規定される量だけ前記方向と直角方向に移動可能の中間部材と、該中間部材と当接した傾斜路を具備し、中間部材の前記直角方向の移動に応動し中間部材に当接した傾斜路で規定される量だけ更にその方向に移動するようになつている被動部材とを具えている点において一致し、ただ、本願発明は、各傾斜路は環状に配設されていて前記直角方向の移動に相当する運動がすべて回転運動になるよう構成されているに対し、引用例のものにはこのような限定がない点において差異はあるが、直線運動を回転運動に変換すること自体は、たとえば開閉器において従来からきわめて普通に行なわれているところであり、これを前提とすれば、前記のような引用例記載の被変換運動部を環状等に構成して回動運動をさせるようにすることは、必要に応じて容易にできることというべく、したがつて、本願は、特許法第二十九条第二項の規定により、同条の特許要件を具備しないものといわざるをえない。